下関市 観光政策課
外国人観光客のデータをチャットボットで手軽に収集
本州最西端に位置する、山口県最大の都市・下関市。九州や大陸の玄関口として発展してきた港湾都市にして、年間700万人以上の観光客が訪れる観光都市です。
下関市観光政策課ではそんな下関市の魅力を広くアピールするため、観光にかかわるさまざまな企画立案や調整業務、観光客誘致などをおこなっています。
今回はTwilioを使ってチャットボットを構築し、Facebook Messengerと連携させることで、メッセージがあった際に自動応答をおこなえる仕組みを作りました。
課題
- 下関市に来る観光客の行動ログが取れていなかった。
- どのような人が下関市に興味を持って来訪しているのかデータ収集ができておらず、効果的な企画立案ができていなかった。
解決方法
- 旅行するシチュエーション(一人旅、恋人との旅行、家族旅行など)や関心事をFacebookのメッセージでヒアリングし、適切な観光地を提案するチャットボットを構築した。
- メッセージのやり取りによって、観光客の属性や興味関心を調査できるようにした。
下関市観光政策課の仕事とは?
下関市豊北・角島エリア 角島大橋
下関市は中国・九州地方から多くの来客がある唐戸市場や、テレビCM・ミュージックビデオのロケーションにも採用されている角島、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘の舞台となった巌流島など、豊富な観光資源を有しています。
下関市観光政策課の国際観光推進室では、主に海外在住の外国人観光客へ向けた観光情報の発信や、外国人観光客の誘致推進に関する業務をおこなっています。
コロナ禍以前にはクルーズ船誘致のために中国の旅行会社と商談をおこなうなど、海外にも足繫く通っていました。今はSNSを中心とした情報発信をメインにしつつ、オンライン商談会にも参加して海外の旅行会社と商談をおこない、アフターコロナを見据えたプランの構築を検討しています。
外国人観光客の「見える化」を目指して
下関市観光政策課 木下様
世界的な潮流として、所得の向上に伴って団体旅行より個人旅行のニーズが高まっている昨今。観光客の属性や動向、求める情報について「見える化・数値化」し、自分たちで直接顧客へプロモーションをしていかなければいけない状況となっています。
しかし
- どのような人が、どのような興味関心をもとに下関市に訪れるのか
- 下関市に来ている観光客が、市内でどのような行動をしているのか
こういった観光客のデータを取得できていないことが、下関市観光政策課にとって大きな課題となっていました。
とりわけ海外からの観光客についてのデータ不足は深刻でした。市町村ごとの細かなデータは存在せず、都道府県ごとのデータも空港で実施しているアンケート調査のみが頼りの状況。インバウンドデータが圧倒的に足りない、統計情報に明確な信ぴょう性もない中で、観光施策を考える必要があったのです。
より効果的な観光施策を立案するためには、観光客のデータを蓄積したうえで分析をおこなうことが必要不可欠です。そのデータ収集の手段として挙がったのが、「チャットボットを利用して、Facebook経由でどのような属性の人が下関に興味を持っているのかデータを集める」ことでした。
Twilioでチャットボットを構築
下関市観光政策課 平山様
TwilioのAutopilotで構築したチャットボットをFacebook Messengerと連携させ、メッセージを送ったユーザーの関心や属性(家族、カップル、友達など)をヒアリングし、そのうえで適切な観光スポットを案内できる仕組みを構築しました。
既存のFacebookページとチャットボットを紐づけたことで、下関市観光政策課のFacebookページを1つのコンテンツとして充実させることができました。またシステム導入によって、「ビジネスとして外国語対応が可能な人材が不足している」という部分もカバーできています。
観光政策課の職員が自ら開発・構築したシステムのため、仕様変更や機能追加も柔軟かつローコストでおこなえるというのも大きなメリットです。
ユーザー側にも大きなメリットが!
Facebook Messengerと連携しているため、利用者はただメッセージを送るだけでチャットボットを利用できます。サービス利用のためにほかのアプリをダウンロードせずに済むため、使いやすさの観点で大きなメリットとなっています。
また外国人観光客の場合、現地のおすすめスポットを知りたくとも、市役所に直接電話で問い合わせるのはハードルが高いものです。しかしチャットボットなら手軽に何度でも利用できるため、観光情報をより身近に感じてもらうことができます。
Twilioを選んだ理由 ~お客様の声~
チャットボットを構築するにあたってTwilioを選んだのは、「従量課金制で手軽に始められること」そして「ノーコードでシステムを構築できること」に大きなメリットを感じたからです。
システム開発は下関市にある梅光学院大学の学生の協力を得つつ進めていたため、コードを書かなければならないとなると参加のハードルが上がってしまいます。しかしTwilioはノーコード・ローコードで機能を実装できるため、文系の学生や職員でも使いやすく、スムーズな開発がおこなえました。
またKWCのスタッフが、技術的な支援をはじめとして全面的に協力する姿勢でいてくれたことも、Twilioを利用するにあたって心強かったポイントです。システムがうまく起動しなかった際には改善点をご提案いただいたり、不明点を質問したときも丁寧にご説明いただいたりと、安心して開発を進められました。
今回の経験によってチャットボットに関する理解が深まったこと、下関市役所の中では先進的な事例に取り組めたことは、大きな財産になっていると思います。
「チャットボットをこれから育てていきたい」
まずは韓国人を対象とした韓国語のチャットボットを構築しましたが、新型コロナウイルスの流行で外国人観光客が減少してしまったこともあり、今ひとつ使ってもらえていないのが現状です。
現在はFacebookを通じてPR活動をしていますが、感染状況や世の中の情勢を鑑みると、過度な情報発信がかえって悪印象を与えてしまう恐れがあります。「コロナが収束したらぜひ来てください」というスタンスでの発信となるため、今は完全なPRができていない状況となっています。
感染流行の収束、ワクチン接種の普及など情勢を見つつ、これからチャットボットを活用していきたいと思います。
欧米圏に向けた新たなチャットボット開発も
また2022年度には、チャット利用がさかんな欧米に向けてもサービスを展開していく予定です。現在は韓国語版と同じシステムを使って、英語版の観光案内チャットボットを開発している最中となります。
欧米圏はFacebook Messengerの利用がさかんなため、より多くの方にご利用いただけるのではないかと期待しています。ぜひ下関市に興味を持ってもらえたら幸いです。
- 自治体名
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下関市 観光政策課
- URL
- 業務内容
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観光に関する企画立案および調整、観光に関する資料の調査・統計、観光宣伝・観光案内、観光情報の収集、観光客の誘致、コンベンションの誘致、外国人観光客の誘致、観光関係団体との連絡調整など