たった2週間でリリースしたBCP対策としてのTwilio活用事例

BCP対策とは

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、その名の通り自然災害や緊急事態時に事業を継続、あるいは早期に回復させるための方法をまとめた計画です。東日本大震災でも注目を集めたため、大企業を中心にBCP対策を策定したところが多いようです。
今回、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響によって日本全国に非常事態宣言が出され、政府や自治体からはBCP対策の中心として考えられている「テレワーク(在宅勤務)」が強く推奨されています。
多くの企業がまさに緊急事態対応に追われている中、一方ではテレワークが困難な業種も数多く存在します。

不動産業とテレワーク

不動産業もそうした業種の一つで、街中にある不動産店舗の多くは物件の紹介を中心とした接客業務を主に行う上、入居者や業者との連絡方法の多くがオフィスにある固定電話やFAXです。そのため、オフィスでの勤務をベースにした業務フローが数多く存在し、テレワークの導入は思ったほど浸透していません。しかしその一方で、外出自粛要請によって、そもそも店舗への来客数が減少していることもあり、オフィスを中心に考える業務形態からオンラインでの業務への変更が急務となっています。

不動産テック企業によるIT支援

そんな旧態依然とした不動産業界にも、数年前からIT化の流れが入ってきています。特に、不動産テックと呼ばれるベンチャーを中心とした企業が多く参入してきており、不動産業者をIoTやAIといった先進技術を駆使してサポートしていくようになってきました。
不動産テックには数多くの分野があり、一般的によく知られるようなWebを使った物件検索サイトはもちろん、スマートロックのようなIoTを活用したもの、さらにはVRやARといったテクノロジーを活用したもの、ローンや保証会社向けなど多岐に渡ります。

ライナフの提供するサービス

不動産テック企業である株式会社ライナフ(以後ライナフ)という名前は、以前からTwilioをご存じの方にはすでに馴染みがあるかもしれません。
2016年にKDDIウェブコミュニケーションズ(以後KWC)が開催したSmart Communication Awardに出場し優秀賞を受賞した「NinjaLock」は、ほぼすべての人が持っているスマートフォンや携帯電話の通話機能を使って鍵の開閉を行うことで、不動産業者が同行しない内見システム「スマート内覧」の実現に寄与しています。
 
※Twilioを使った事例につきましては、こちらでご覧になれます。
 
ライナフは、スマート内覧以外にも不動産業界向けのサービスを展開しており、例えば不動産業者間で行われる物件確認を自動化する「スマート物確」もその一つです。物件確認というのは、不動産業者が最新の物件情報(紹介の可否、家賃など)を物件のオーナーに確認するための行為で、多くの場合電話を使って行われます。

実はここでもTwilioが使われており、確認のためにかかってきた通話に対して、オーナーに変わって物件情報を音声で自動応答しています。物件情報にはマンションやアパートの名前など固有名詞が含まれるため、通常の音声認識エンジンでは誤認率が高くなりますが、ライナフは独自の音声認識エンジンを自社で開発し、認識率を95%以上に向上させています(2019年1月、ライナフ調べ)。このサービスによって、24時間365日いつでも物件確認が可能になるだけでなく、FAXやLINEなどとも連携することによって、業務効率の向上に役立っています。

COVID-19対策として2週間で実装した仕組みとは

スマート物確では、一次応答をAIが行うため業務効率には寄与するのですが、中にはAIだけでは対応できない質問なども発生します。そのような場合、通話をAI応答から物件オーナーへの電話に自動で切り替えていますが、今回のテレワーク推奨によって、物件オーナーに連絡が取れなくなることが想定されました。
そこでライナフでは、従来転送先となっていた固定電話をブラウザに置き換えることによって、複数人がどこでも着信ができる仕組み「スマート物確・リモートワークオプション」を考案しました。

スマート物確
提供元:ライナフプレスリリース(2020/4/9)

驚くべきことに、ライナフはこのアイデアの発案からたったの2週間でサービスをリリースしました。
※ニュースリリースはこちらからご覧になれます。

どのようにして2週間で実装ができたのか

ここからは、ライナフの代表取締役である滝沢潔さんと、実際に実装作業を行ったライナフの開発一部マネージャー土屋健太朗さんに直接お話を伺いました。

株式会社ライナフ 代表取締役 滝沢潔様
株式会社ライナフ 代表取締役 滝沢潔様
 
株式会社ライナフ 開発一部マネージャー 土屋健太朗様
株式会社ライナフ 開発一部マネージャー 土屋健太朗様

 
インタビュアー:KDDIウェブコミュニケーションズTwilio事業部エバンジェリスト 高橋克己(以後、高橋)

高橋克己
高橋

世間は色々と大変な状況ですが、ライナフさんも現在は完全テレワークに移行されているのでしょうか?

滝沢様
滝沢様

はい、3月の終わり頃からテレワークの環境を整え、一部の社員はすでにテレワークを始めていましたが、東京都の非常事態宣言が発出された4月7日から、全社員をテレワーク&出社停止にしました。

高橋克己
高橋

3月から着実に準備をしていたのですね。では、そもそも今回リリースしたサービスのアイデアが生まれたきっかけがあれば教えていただけますか?

滝沢様
滝沢様

きっかけは3月30日です。テレワークの推奨により、すでに出社率が3割程度まで減っていた社内で、私が発した『こんな状況でもピンチをチャンスに変えて伸びている会社があるよね。ライナフでも何かできないかな。』というほんの一言でした。

 

その声を背中越しで聞いた土屋くんが、『ぜひ、やりましょう!』と反応し、そこからアイデア出しを始めました。すでにあるサービスに付加できて、テレワークの支援にもなりそうなものを考え、今回のスマート物確のブラウザフォンへの転送というアイデアが生まれました。
 
まずは社内の主要メンバーにも意見を聞きながら、なんとしても2週間でサービスリリースできるように頑張ろうとなりました。

高橋克己
高橋

たしかにこういうサービスはスピード感が大切ですよね。ブラウザフォンということで、まずはTwilioを思い出していただいたのかと思いますが(笑)、その認識で合ってますでしょうか?

滝沢様
滝沢様

はい。以前からTwilioは、弊社のサービスにも取り入れていますし、そもそも今回のアイデアを一緒に考えた土屋くんもその主要な開発メンバーなので、Twilioを採用することは最初から決まっていました。

高橋克己
高橋

ではここからは、実装に携わったエンジニアの土屋さんに伺います。今回のオプションには、ベースの技術にTwilioが使われていると伺いましたが、具体的にはTwilioのどのサービスを使ってらっしゃいますか?

土屋さん
土屋様

Programmable Voiceです。ブラウザを使った通話を実現したかったので、Java Script SDKを使って実装をしました。

高橋克己
高橋

ありがとうございます。ところで、2週間でリリースというのはものすごく早いと思うのですが、実際に実装にかかった人数と期間はどのくらいでしょうか?

土屋さん
土屋様

Twilioを使った実装部分については私一人で担当しました。以前からProgrammable VoiceやProgrammable FAXなど、Twilioにはある程度慣れているので、調査を含めて開発にかかった期間は40時間くらいだと思います。

高橋克己
高橋

素晴らしい!
一人で実装されたのですね。実装にあたって苦労した点や、逆に良かった点があれば教えて下さい。

土屋さん
土屋様

複数人に発信する方法は調査を含めて少し苦労しました。ただ、ブラウザでの通話については、TwilioのQuickStartの記事や、高橋さんのQiitaの記事などがとても参考になりました。

高橋克己
高橋

それは良かったです(笑)。
では、再び滝沢さんにご質問なのですが、今回のサービスのリリース日はいつでしたでしょうか?また、お客様からはどのような反響がございましたか?

滝沢様
滝沢様

今回のサービスリリース日は4月9日です。3月30日から動き出したプロジェクトなので、実際は2週間もかかっていないです。従来弊社では、新しいサービスのリリースの際は、事前にパイロットユーザを決めてフィールドテストも兼ねてから行うことが多いのですが、今回はそういう手法はとらず、しかもあえて既存ユーザではなく新規ユーザから告知をしていきました。
 
おかげさまで、リリース初日からお問い合わせをいただくことができ、中には『このような状況だからこそ提供できるサービスを、スピード感もって発信されていることはとても素晴らしいとともに、不動産業をしている当社としては心強いサービスだと思いました。』とか、『リモートワーク推進検討の中で電話がネックになってたので、これでもっとリモートワーク進めましょうって、再度上にあげられます』といった現場担当者の声、さらには『コロナウイルス対策として無償提供も用意されており、金額的に決済も取りやすくとてもありがたく、まさに待っていたサービス』とのお声も頂戴しました。
リリースから3週間経った現在(取材当時)、早速導入された企業様が何社も出てきていますし、とても良い滑り出しだと思っています。

高橋克己
高橋

大絶賛じゃないですか!素晴らしいですね。
では、最後に滝沢さんに伺います。これからの不動産業界はどうなっていくのでしょうか?

滝沢様
滝沢様

まず思うのが、不動産業界では長い間、盤石と思われていたビジネスモデルが、実は盤石ではなかったということです。例えば、不動産屋さんと一緒に物件を見て回る内見についても、今まではごく当たり前の業務フローでしたが、コロナウィルスによって人との接触を極力避けなくてはならない現在ではむしろNGです。
 
つまり、今まではなかったリスクが突然生まれたために、それに対応するために業務フロー自体を見直さなくてはならなくなりました。
行政や規制に関しても今後は変わる可能性がありますし、現状でも少しずつ変わってきています。例えば、従来であれば対面で行う必要があった重要事項説明ですが、現在ではオンラインによる重要事項説明も一部の条件を満たせば認められるようになってきました。
 
押印を伴う紙面による契約書であったり、未だ解決するべき課題は残りますが、今回の一連の社会変化によって今後不動産業界も大きくIT化に舵を切ると考えています。

高橋克己
高橋

ライナフさんはそういう変化にも対応できるサービスをいくつもお持ちなので、この社会情勢の変化の波にうまく乗っていけそうですね。
これからも楽しみにしています!本日はありがとうございました。

今回のインタビューもオンラインで行いましたが、今までの「普通」が普通でなくなってしまった環境において、テクノロジーを活用することで、従来の仕事を単に再現するだけでなく、さらに便利な世界を創ることもできるということを認識しました。
 
ぜひTwilioの特長でもある、
 
・基本料がなく完全従量制なので、新しいサービスを開発しやすい
・面倒な回線契約も不要で、すべてクラウドベースで完結できる
・APIの提供だけでなく、各種SDKが用意されているので開発が容易
 
をうまく活かして、この状況を乗り越えていきましょう。

■株式会社ライナフについて https://linough.com/
 

 
2014年設立。“不動産に確かな価値を” をビジョンに事業展開。スマートロックやキーパッド、共用エントランスを自動解錠するIoT製品「NinjaLockシリーズ」と、スマートロックを活用した不動産管理サービスを提供。賃貸物件の空室情報をAIが自動応答する物件確認サービス「スマート物確」、セルフ内覧サービス「スマート内覧」など、各種ソリューションを提供。累積資金調達額は10億円以上にのぼる。
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