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開発者の強い味方!「SDK(ソフトウェア開発キット)」とは?

公開日:2022.05.24

更新日:2024.03.29

KDDIウェブコミュニケーションズ

アプリケーションの開発をおこなう開発者やサービスを運営・提供する企業の間で、SDKの導入によって機能の拡大を目指す動きが広がっています。

この記事では「そもそもSDKがどのようなツールであるか」を紹介するとともに、SDKの具体例や利用のメリットについて詳しく解説します。

SDKとは

SDKとは

SDKは「Software Development Kit」の略称で、ソフトウェアを開発する際に必要なプログラムやAPI・文書・サンプルなどをまとめてパッケージ化したものです。日本語ではソフトウェア開発キットとも呼ばれています。主にWEBサービスやアプリケーションソフトウェアの開発場面において利用されています。

これまでWebサービスやアプリケーションを開発する際には、開発者が自分で一からソースコードを書いたりプログラムを構築したりする必要がありました。そのため開発には高度なプログラミング知識が必要なうえ、作業にも膨大な時間がかかっており、開発者の大きな負担となっていました。

一方でSDKにはサンプルコードやドキュメント、APIやライブラリなど、「Webサイトやアプリケーションに特定の動作をさせる」ためのツールが内包されています。これにより開発者は、ソースコードを構築する工数を削減したうえで、欲しい機能を簡単に自社サービスに実装できるのです。

SDKを提供している企業は、自社のアプリケーションを容易に使ってもらうためにSDKを配布しています。たとえば世界中で利用されているAmazon Web Serviceでも、希望する開発言語やプラットフォームでAWSにアクセスして管理できるよう、9種類のSDKを用意しています。

APIとは

APIとは

SDKと似た役割を持つものとして、APIというものが挙げられます。APIは「Application Programming Interface」の略称で、ソフトウェアやサービスと、その機能を使いたい開発者をつなげる窓口のような役割を担います。

ソフトウェアやサービスを利用して欲しい企業側は、APIを通じて利用者が自社の製品を導入する環境を整えられます。そして利用者にとっては、開発中のサービスに他社の機能を簡単に埋め込むことができるようになります。

作りたい機能のAPIを他社から取得すれば、その部分は改めて自社で開発をおこなう必要がありません。効率性を高め、短期間で完成度の高い製品を提供できるでしょう。

APIとの違い

APIとの違い

SDKとAPIは同じような用途で使われるツールです。しかし、その提供方式には大きな違いがあります。

APIは既存のサービスやソフトウェアの一部を公開・提供することで、さまざまなサービスやアプリケーションとの連携を促すものです。あくまでインターフェースを提供しているだけにとどまるため、開発時に直感的に利用しづらいことがあります。

これに対して、SDKは開発キットとして提供されています。SDKの中にはAPIへの問い合わせデータを作成したり、データフォーマットをチェックしたりするなど、開発を補助してくれるツール等も含まれます。またSDKを利用するためのドキュメントやサンプルも付随しており、利用者が開発を進めやすいよう総合的にサポートしてくれます。

SDKに従って開発するだけで、難しい機能を理解しきれずとも、簡単に実装できるのです。

SDKには何が入っている?

SDKには何が入っている?

前述したように、SDKの中には、開発をサポートしてくれるさまざまなツールが含まれています。ここでは代表的な内容について紹介します。

コンパイラや実行環境

SDKを利用するためには、プログラムの作成後にコンパイラを使ってプログラムをコンパイルしたり、専用の実行環境を導入したりする必要があります。

デバッガ

プログラムの中に記述ミスなどの不具合(=バグ)が含まれている場合、正常に動きません。デバッガはそのような不具合の原因を探して、原因を取り除くサポートをしてくれるツールのことを言います。

動かしている最中のプログラムを一時的に停止させたり、実行途中のデータを書き出したりなど、作業をおこなう上で役に立つ機能を提供しています。

API

プログラムを利用するためのAPIが配布されるケースもあります。利用するOSやプログラミング言語に合わせて、環境ごとに異なるバージョンのファイルが配布されることが多いです。

これらの他にも、SDKのマニュアルを含んだドキュメントやライブラリ、OSに組み込むためのドライバなどを含めて、一つのSDKとして公開されています。

SDKの具体例

続いては、実際に公開されているSDKの例を紹介します。

Windows SDK

Windows SDKWindows用アプリケーションの開発時に必要になるツールをまとめたものです。ドライバやデバッグツール、さらに挙動確認に利用できるテストツールなど、さまざまな内容が含まれています。なおWindows SDK単独で提供されているだけでなく、Microsoftの開発ツール「Visual Studio」にもWindows SDKが含まれています。

SDKによっては、古いバージョンのWindows上で実行できないケースもあるため注意が必要です。また「Windows Driver Kit(WDK)」や「DirectX SDK」と併用した方がいいなど、使い方の幅が広いため、十分に調査して利用するとよいでしょう。

iOS SDK

iOS SDKiPhoneやiPad、iPodといった、iOSを導入した端末で動作させるアプリケーションを開発するためのSDKです。iOSSDKは単独では公開されておらず、Macで動作するアプリケーション開発用のSDKをまとめた「Xcode」と呼ばれるIDEに含まれています。

Xcodeは、Mac OSから接続できる「Apple Store」で無料ダウンロードできます。しかし開発したアプリケーションを「Apple Store」に登録する場合は「iOS Developer Program」への申請が必要です。開発したアプリケーションはアップル社の審査を受けた上で、「Apple Store」を通してユーザーに公開できます。

Android SDK

Android SDKは、Android OS上で動作可能なアプリケーションを作成するためのSDKです。

Windows SDKやiOS SDKは、それぞれWindows、Mac上でのみ利用可能なSDKでした。しかしAndroid SDKではWindowsでもMacでも利用可能な環境が用意されています。

Android SDKは多くの場合、「Android Studio」と呼ばれるツールを使ってインストールされます。Android Studioは、Androidを開発したGoogleが提供しているAndroid開発用のツールをまとめた統合開発環境です。

Android StudioにはAndroid SDKの他にも、Android OSをパソコン上に再現するためのエミュレータや、デバッグを効率よく進めるためのデバッガが含まれています。それにより、開発の手助けとなるツールの導入や実行環境の整理ができるようになります。

SDKのメリット

SDKのメリット

続いては、SDKを使うことにどのようなメリットがあるかを具体的に見ていきましょう。

メリット①:Web開発者の負担を軽減する

SDKの最大のメリットは、「Webサービスやアプリケーションの開発を効率化できる」ことです。

先述の通り、SDKにはライブラリやドキュメント、仕様書など開発に必要なさまざまなツールが入っています。これを利用することで、開発者は必要な情報を集める手間も、一からコードを書いて構築する手間も省けるのです。SDKが提供する機能を、簡単かつスムーズに自社サービスへ組み込めます。

自社で機能を作りこむ場合に比べて、大幅に開発コストを削減できるでしょう。

メリット②:サイトの読み込み速度が遅くなるのを防ぐ

データが重くなったり非効率な設計になったりすることでサイトの読み込み速度が落ちると、ユーザーからの満足度が下がり、離脱率や機会損失につながってしまいます。

しかしSDKで提供されている機能には多くの使用実績があります。処理の内容が洗練されているほか、セキュリティに配慮した強固な作りになっていることが期待できます。

自社製作と比較して無駄な処理を減らせるケースも多いため、サイトの読み込み速度が遅くなるのを防げるでしょう。

メリット③:さまざまな機能を一気に実装できる

多くのSDKでは、データの登録や読み込み、一覧表示するためのツールなど、複数のさまざまな機能がパッケージ化されています。これらの機能を活用すれば、自社のサービスに対して多くの機能を一括で追加することも可能です。

たとえばインターネット通販のサービスサイトを作るとして、「ユーザー層の分析をおこないたい」「会員制にしたいから登録・認証機能をつけたい」「決済機能が欲しい」「エラー検知を自動でできるようにしたい」など、さまざまなニーズが生まれます。このとき欲しい機能がまとまっているSDKを利用すれば、一つずつバラバラに追加する場合と比べて、効率的にサイト開発をおこなうことができます。

SDKの種類は豊富にあるため、複数のものを併用したり機能の豊富なタイプを利用することで、さらに開発の幅を広げられます。フル活用できれば、実装可能な機能が増えるだけでなく、短縮できた時間を使ってさらなる機能追加を検討する余裕も生まれるでしょう。

SDKの提供側にもメリットが!

SDKを開発して公開することは、提供側の企業にもメリットがあります。

最も大きなメリットは、自社のサービスを利用してもらう敷居が低くなることです。初めてサービスを導入する開発者にもわかりやすいドキュメントを整備し、迷うことなく機能を追加できるライブラリを準備すれば、長期的に利用される可能性が高まります。

また多くの開発者に取り入れてもらうことで、自社のサービスに不足している機能について意見をもらうことができたり、不具合を見つけてもらえたりする可能性があります。品質向上につなげることもできるのです。

コミュニケーションAPIサービス
「Vonage」のご紹介

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Vonageは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションやビジネスへ組み込めるクラウドAPIサービスです。自動電話発信や電話転送、対話型IVR、自動SMS通知や二要素認証など、多岐にわたるサービスを実現できます。

コミュニケーションに関わる機能を自社で1から開発するのには多大な工数がかかります。通信の暗号化といったセキュリティ対策など考慮せねばならない点も多く、そのために実装を諦めてしまう企業も少なくありません。

しかしVonage APIと連携すれば、それらの工数をすべてVonage側が担ってくれます。お客様側でのインフラ開発はもちろん、ネットワークの構築・維持コストも必要ありません。ただ数行のコードを書き加えるだけで、自社サービスをマルチチャネル化できるのです。

まとめ

この記事ではSDKの概要やAPIとの違い、SDKの具体例や利用するメリットについて解説しました。

SDKの利用は開発の手間を減らすだけでなく、ソフトウェアの品質向上にもつながる効果を期待できます。アプリケーション開発の際には利用できそうなSDKがないかを確認し、効率性の向上に役立てられるか検討してみてください。

執筆者情報

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KDDIウェブコミュニケーションズは、常に「開発者目線」を大切にしており、ブログ記事がお役に立てれば幸いでございます。


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