本記事は、5月22日(金)に開催されたTwilioビジネスセミナーVol.61のレポートとなります。 今回ビジネスセミナーは「今日からできる!TwilioによるCOVID-19対策」と題しまして、Twilio Japan合同会社の池原大然様と、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズの高橋克己によるウェビナー形式での実施となりました。
ニューノーマルに適応するためにTwilioがご支援できること
はじめにTwilio Japan合同会社デベロッパーエバンジェリストの池原様より「ニューノーマルに適応するためにTwilioがご支援できること」についてお話いただきました。
Twilioとは
Twilioは、2008年に米国サンフランシスコで創業されたコミュニケーションAPIをクラウドベースで提供する企業です。日本では、2013年よりKDDIウェブコミュニケーションズが独占販売を行ってまいりました。2019年夏にTwilio Japan合同会社が設立され、当社はTwilioゴールドパートナーとして日本市場でのTwilioの普及活動やご支援をしております。
まずは、全世界でのTwilioの利用者数について、2020年度第一四半期(1月〜3月)の数字をご紹介いただきました。それによると、開発者数は800万人以上、またアクティブアカウント数も19万を超えているそうです。サービスを提供している国の数も100カ国を超えており、グローバルでのビジネスサポートができるようになっています。 Twilioは、電話やSMS、チャット、ビデオといった様々なコミュニケーションチャネルをAPIで提供しており、新規にシステム構築する場合はもちろん、既存のシステムと連携することも容易にできます。たとえば、自動音声受付(IVR)、二要素認証・二段階認証、コンタクトセンター、サーバー死活監視など、利用用途は多岐に渡ります。 今回のウェビナーでは、Twilioが提供する様々なコミュニケーションチャネルのうち、音声通話機能(Programmable Voice)を使った、すぐにできる在宅勤務を支援するTwilio活用例をご紹介いただきました。
Twilio Studioを利用した期間限定のお問い合わせ番号の設置
在宅勤務を中心に考えた働き方を検討していく中で、避けては通れないのがオフィスにかかってくる電話の対応です。多くの企業がオフィスに引き込まれた固定電話で対応していたため、在宅勤務では電話が取れず、しかたなく電話対応を一時休止して、メール対応に切り替えていたりします。
Twilioが提供するStudioと呼ばれるドラッグ&ドロップでコールフロー作成できるツールを使用すると、Twilioで購入した電話番号にかかってきた通話を、社員の携帯電話などに簡単に転送が可能です。Studioはノンプログラミングで操作が可能なので、非エンジニアの方でも簡単に転送させることができます。 ウェビナーでは、実際に電話番号の購入からStudioのフローの設定までをライブデモでお見せし、いかに簡単に転送ができるかをご紹介いただきました。 なお、日本の電話番号を購入する場合は、Bundlesと呼ばれる本人確認書類の登録を求められます。
Twilio Flexを利用した在宅勤務対応コールセンターの立ち上げ
続いて、Twilio Flexを利用した在宅勤務対応可能なコールセンターについてご紹介いただきました。 Twilio Flexの特長は、ブラウザとインターネット回線さえあれば、電話やチャット、SMSなどの様々なコンタクトチャネルを一元的にサポートできることです。またサーバーやPBXなどの機器が不要で、立ち上げもわずか数分でできます。 今回のウェビナーでは、Twilio Flexを使用したコンタクトセンターの立ち上げまでを、ライブデモでご紹介いただきました。実際のコンタクトセンターの運営では、ACD(着信振り分け)やIVR(自動音声受付)の設定を含め、さまざまな設計ポイントが存在しますが、シンプルに電話を受電できる環境、SMSやチャットを受信できる環境であれば5分たらずで構築できます。
新型コロナウイルス感染症に関する支援策
Twilioはワールドワイドで、新型コロナウイルス感染症によって引き起こされる問題に取り組むNPO、ボランティア団体、企業に対する支援策を用意しております。
- ImpactAccess Program500米ドル相当のクレジットの付与ならびに利用料の割引
- Twilio Video Boost Program
Programmable Videoを3ヶ月無料で利用可能
- Flex Boost
最大3万米ドル(≒300万円)相当までのFlex利用料を無料化
支援策の詳細につきましては、こちら(英文)をご参照ください。
今すぐ導入が可能なTwilio連携ソリューションのご紹介
続いてのセッションでは、弊社Twilio事業部エバンジェリストの高橋が「今すぐ導入が可能なTwilio連携ソリューション」についてご紹介しました。 まず、いくつかの著名な企業の経営者のコメントともに「アフターコロナでも今までの普通は戻らない」というキーワードを提言しました。その上で、昨今の在宅勤務需要を受け、ビデオ会議システムがなぜここまで重宝されるのかについて、以下のような持論を展開しました
1. ベビーブーマー世代(1946年から1964年生まれ)への衝撃
企業の経営者に多いこの世代の人々は、オフィスに出社して仕事をすることが当たり前であり、対面での会議を重視する傾向が強いのが特徴です。 しかし今般の新型コロナ禍を受け出社ができなくなり、この世代の経営層もビデオ会議システムを半ば強制的に使用しなければいけない状況になりました。今まであまりデジタルツールを活用していなかったこの世代が、実際に使って業務を行ったことで、実はオンライン会議ツールは意外と使えるし、むしろこれでいいのではという「考え方の変化」を生んだのです。
2. テキストでは表現できないノンバーバルなコミュニケーション
メールやチャットなどのテキストベースでは伝えきれないニュアンスや、表情などから伝わる空気感もこのビデオ会議システムを使うことでお互いにやりとりされるということがわかりました。 これにより、実際に対面で話すのとほぼ同等の感覚を掴むことができるようになりました。
3. 「雑談」に現れる帰属意識
これは、ある種日本人の国民性なのかもしれませんが、会社に行かないと不安、他の人が何をしているかわからないという、ある種のストレスを感じる人が多いようです。 従来、会社内で自然に行われていた「雑談」は、いまやオンラインミーティングの開始前の僅かな時間を使って、ごく自然に行われるようになり、これが意外とストレス軽減に役立っているようです。
4. 安定した品質と必要十分な機能
一部ではオンライン会議システムのセキュリティ面での脆弱性に不安を覚える企業などもいるようですが、セキュリティ対策は日々行われていますし、運用における対策も存在します。 それにもまして、会議をするには十分な音質と画質、また画面共有機能やホワイトボード機能などの豊富な機能が、オンライン会議システムが重宝される大きな要因になっているといえるでしょう。
これら4点を踏まえ、ビデオを使ったコミュニケーションがニューノーマル(新しい普通)に取り入れられることは間違いないのではないでしょうか。実際に、この新型コロナ禍を受けて、私どもに寄せられるお問い合わせもビデオに関するものが増えています。 では、今後ビデオを使って新しい生活様式を作るにはどのようにしたらいいのでしょうか。相撲に例えて、「土俵で強い力士になるより、自分が勝てる土俵を作る」ことの大切さをお伝えしました。これは、ビジネスにおいては、選手生命の短い強い力士になるより、長期的に勝てる土俵を自ら作ることが良いのではないかということです。 短期的な売上向上を目指すのであれば、現在市販されているビデオ会議システムを使ったビジネスは評判になるかもしれませんが、長期的に考えて他社との差別化ができるしくみを作りたければ、自社システムにビデオ機能を取り入れるほうが効果的なのではないでしょうか。 TwilioのProgrammable Videoを使うことで、現在お持ちのシステムにビデオコミュニケーションを組み込むことが可能になります。これこそが、Programmable Videoの上手な使い方です。
Video会議室 for Garoon
既存システムにビデオコミュニケーションを組み込んだ事例として、サイボウズ株式会社が提供するグループウェア「Garoon」の予定表機能に、Programmable Videoを組み込んだデモをご紹介しました。 従来のビデオ会議室システムでは、会議の開催に多くの手順が必要でしたが、このしくみを使えば、予定表の詳細画面に予定をいれるだけで会議を開催することができます。もちろん、ビデオ会議システムを購入する必要もないので、導入コストや運用コストを削減することもできます。
Video以外に需要がありそうなFAX
電話と同じように、ワークスタイルが在宅勤務中心になると対応に困るのがFAXです。すでにFAXのオンラインサービスは多数ありますが、多くの企業がいまだに紙でのFAX送受信を行なっているのが現状です。 TwilioではProgrammable FAXというAPIを提供しております。このAPIを使うことで、PDFファイルでFAX送受信が可能になるだけでなく、既存のシステムやファイル共有サービスと連携させることもできます。 今回はTwilioのProgrammable FAXを使った連携例を2つご紹介しました。
box連携
1つ目は、以前Box Japan社とセミナーを開催した際にデモでご紹介したシステムになります。
このシステムは、Twilioとboxを連携させることで、Twilioで受信したFAXをそのままboxのフォルダ内にアップロードし、さらにアップロードしたPDFファイルのリンクをSMSで送信しています。
また、送信時もbox内にあるファイルをクリックしていくだけでFAX送信が可能になり、FAXを使った業務を完全オンライン化できます。
kintone連携
2つ目は、サイボウズ社が提供するデータベースサービスkintoneと連携し、kintoneのアプリ内に作成した「受信箱」にFAXを格納させる仕組みです。
FAXのデータはPDFで保管され、受信日時、送信元の情報もkintone上に格納されます。kintone連携については弊社のブログでもご紹介しておりますので、ご興味のある方はこちらの記事をご覧ください。
電話転送における発信者番号問題
先ほど池原様よりTwilio Studioを使った電話転送の仕組みをご紹介いただきました。ご紹介いただいた転送の仕組みで問題なく通話をすることが可能です。 しかし、このしくみでは発信者番号がTwilioで取得した050番号になってしまい、実際にかけてきた発信者の電話番号がわかりません。そのため、折り返し対応も難しくなります。これを解決するための方法についてもご紹介しました。
SIP Clientの利用(SIP Registration)
今回ご紹介したのは、スマートフォン上で動作する市販のSIPアプリを使った方法です。
上の図の通り、左のSIPアプリからTwilio間は公衆電話回線網(PSTN)を利用せず、SIP経由で電話をかけるので発信者番号の通知が可能になります。この機能を使用する場合は、スマートフォンにSIPクライアントアプリをインストールし、設定をする必要があります。詳しくは以下をご参照ください。
SIPクライアントアプリの設定方法
SaaSも活用しよう!
システムをこれから作成する時間や予算がないという方には、Twilioベースで構築されたSaaSサービスを活用をオススメします。たとえば、合同会社Selfree様が提供するコンタクトセンターソリューション「CallConnect」は5分もあればパソコンで受発信、録画、顧客管理のサービスが始められます。 また、留守番電話に入ったメッセージを文字に変換し、お知らせする「TRANSREC」もオススメです。 既存の番号に着信した電話をTRANSRECに転送すると、通話の録音をした後に音声認識が行われて、あらかじめ指定しておいたメールアドレスにテキスト化されたメッセージと音声データが送られます。本来は、個人の留守番電話サービスとして利用されていますが、最近では企業の固定電話の転送にも使われるケースが増えています。